マルタイは社交性に欠け、言葉遣いにも不備がある為にそれが元で仲間と言い合いになる事もあるが、何事にも一生懸命に取り組むという芯の強い点が見られる。
場の空気を読んで周りに合わせたような発言ができなかったり、気遣いが足りないという点は否めないが、ある意味、こちらから折れてじっくり話をしてみると彼自身も納得し、お互いが深く分かり合えるのではないだろうか。
山田さんにしても彼の表面的な態度や発言だけを捉えて、また彼自身が自分を良く見せようという性格ではない事も合わさり、誤解が生じているのだと思われる。
彼のマイナス面を補って余りあるほどの一生懸命さとバイタリティ、度胸の良さは充分評価できるのではないか。
私は調査終了後、調査結果を山田さんにお伝えしました。
山田さんは『うーむ』と考え込みながらも『私は彼（マルタイ）に対して少し偏った見方をしていたようです。今後彼と酒でも酌み交わしながらもう少し腹を割って話をしてみようかと思います。本当にありがとうございました。』と話されていました。
それから約半年後、山田さんからお電話を頂きました。
『このたび、私の娘と彼（マルタイ）が結婚する事となりました。その節は本当にありがとうございました。私はあれから彼と何度も話をし、私もすぐにかっとなる性格なので少々言い合いになる事もあったんですが、不思議な事に言い合いをすればするほど彼と打ち解けていきましてね。最終的には彼を1人の男として認めている自分がいました。いやぁお恥ずかしい話ですが、私自身初めの頃は彼に対してある種バリアーみたいなものを張っていたんでしょうね。Dさん（私の事）から報告を受けた後、思い直して自分から彼に歩み寄ってみたんですよ。近頃の若者はなっていないと頭ごなしに反対していただけの自分が情けないです。何か大切な事を彼自身から学んだような気がします。本当に良かったです。ありがとうございました。』
とても歓喜に満ちた声でお礼の言葉を頂き、私もそれに祝福の言葉を添えて受話器を置きました。
昨今、人と人との繋がりが希薄になってきている理由は、お互いが本気で話し合うという機会が減っているからなのでしょうか？
私はこの調査で人間関係というものの重要性を改めて認識したように思います。
調査という行為はまだまだ日本社会においては疎んじられかねない行為かもしれません。
但し、今回のように調査をしなければ恐らくお互いが誤解を抱いたまま縁談も破談となっていたかもしれません。
少なくとも山田さんにとっては必要な調査であったと思います。
私は近年様々な事件がおきて世の中がどんどん殺伐としていっている理由の一つに、人間関係の希薄さがあるように思います。
私はそんなギスギスした関係を少しでも和らげてさしあげる潤滑油のような役割をこの仕事で果たしていけたらと考えています。
