平成19年4月より年金分割制度が開始されましたが、いまだに制度の内容を少し誤解していらっしゃる方も多いようなので、ここでおさらいしておきましょう。
まず、これまでは離婚時に家庭裁判所によって年金分割の決定があったとしても、相手が受け取った年金の中から指定した口座に振り込んでもらうという形でしたので、振り込みが滞ったり、相手が死亡した場合には年金も受け取れなくなったりしていました。
このため、離婚を望んでいるものの、専業主婦が受給できる基礎年金だけでは老後が不安だという理由で、離婚をあきらめている方も多くいらっしゃいました。
このように妥協で不本意な結婚生活を続けるというこの矛盾を鑑みた結果、生まれたのがこの制度です。この年金分割制度とは、専業主婦だった方が離婚した場合、婚姻期間中の年金(基礎年金を除く、厚生年金や共済年金などの上乗せ分)を、平成19年3月以前のものは双方の話し合いの上で割合を決めて任意分割、平成19年4月以降のものは話し合いがまとまらなかった場合、家庭裁判所へ申し立てると裁判所で分割割合を決定し、最大5割を限度として分割されるというものです。
また、自分の名義で年金が支給されるため、元の配偶者が死亡しても年金受給に影響はなく、直接年金を受け取ることができるのです。ただ、裁判所の執行力をもって強制的に分割されるのは平成19年4月以降の婚姻期間分の年金ですので、もし平成19年5月に離婚された場合、平成19年3月以前の年金は双方の同意の上で任意の割合に分け、平成19年4月分の年金だけが強制力をもって分割されるということです。
また、基礎年金は除外されますので、自営業者の方などはこの例によりません。当然、平成19年3月以前のものについては、裁判所の強制力はありませんから、離婚協議書に分割割合などを明記していても、相手が払わないといった場合、裁判所に申し出ても払ってもらうことはできません。
こういった点からみると、今すぐに役立つというよりは、若い世代に向けたこれからの制度といえるでしょう。しかし、これまで家庭を守ってこられた主婦の方々にとっては、メリットの多い制度です。なお、この制度のデメリットとしては、再婚した新しい配偶者に離婚歴があった場合、前の妻との年金分割によりその方の年金受給額が減額されている可能性が挙げられます。また、夫より先に元の妻が亡くなられても、その後に減額されていた年金が全額に戻るというようなことはありません。
さらに、平成20年4月からは、第三号被保険者(いわゆる専業主婦などの被扶養配偶者)の場合、夫婦の協議なしでも年金が半分に等分されるという制度が設けられました。ただし、強制的に2分の1に分割されるのは平成20年4月以降に納付した年金についてです。
なお、50歳以上の方は年金手帳と戸籍謄本(もしくは戸籍抄本)があれば社会保険事務所で年金分割の結果受け取れる金額をナイショで計算してもらえます。この制度を活用するにしても、しないにしても、むやみに悲観するより正しい知識を持つことが、あなたの不安を取り除く手伝いになると思います。