軽微な接触事故の大きな罠(前編)

最近、多発するさまざまな犯罪を見聞きするにつけ、私たちはいつ何時災難に遭うか分からない世の中になってしまっていることを痛感します。
そこで今回は、車を運転する人が知らなければ、とんでもない事件の加害者に仕立てられてしまう詐欺の手口を紹介しましょう。

先日のこと。2年前に奥さんの浮気調査を依頼され、その動かぬ証拠を短期間で撮り、大変喜んでいただいた依頼者様から、久しぶりに電話をいただきました。調査後、いろいろと紆余曲折はあったものの、なんとか元のサヤに納まったと聞いていたので、「奥さんの浮気がまた再燃したのか?」と心配しましたが、そうではなく、その奥さんが「車の接触事故を起こしトラブルになっています。アドバイスをいただけませんか?」という相談でした。話は次のような内容でした。

「3日前に家内が、雨が降っていたので中学1年の子どもを車に乗せ、学校に送ろうと家を出ました。
信号のない四つ角に差し掛かり(そこは日ごろから人が飛び出してくる危ない箇所だということをよく知っているので)、いつものように一旦停止したところ、助手席の子どもが「自転車がぶつかってくる!」と叫んだので、驚いて左側を見た瞬間、自転車が車の左前部にぶつかっていました。
傘を差して自転車に乗っていた人は、よろけながらも自転車から上手に飛び降り、自転車だけが車の前部に倒れこんできました。
急な出来事に驚いた家内は、一瞬体がすくんで身動きができなかったと言います。すると、自転車に乗っていた男性は(そのとき、初めて60歳くらいの方だと分かったとのこと)何事もなかったように、自転車を起こしてサドルにまたがり、再び傘を差して走り去って行きました。我に返った家内は、その男性が何事もなく立ち去り、ケガのない状況だったこともあり、全身から力が抜けるくらいホッとしたと言います。
その後、後続の車からクラクションを鳴らされ、慌ててその場所から離れると、30m程先の空きスペースに車を駐車し、自転車が追突した箇所を確認した。自転車のタイヤが当たったらしく、フェンダー左角に自転車のタイヤのゴム跡らしきものが黒くへばり付いていた以外に、大きな傷は全くありませんでそた。自転車の男性にも幸いケガがなく、こちらにも損害がなかったことで、大事に至らなくて良かったと思い、家内はそのまま子どもを学校に送って行きました。」

奥さんとしては、こちらが停止していた所に、傘を差した自転車が、前方が見えにくい状態のまま追突してきたのだから、100%相手方に責任があると思っていたようです。
また、車に大きな傷があれば、修理する際は警察に届けておかないと保険が下りないくらいの知識は持っておられたのですが、何の損傷もなかったことで、警察に連絡しようという考えは思い付きもされなかったようです。実は、奥さんが気楽に考えたこのことが、後で引き起こる大きなトラブルの最大要因になってしまったのです。

依頼者様の話を続けますと、
「翌朝、私や子どもが家を出た後、パトカーに乗った警察官が家を訪ねて来て、『ひき逃げの容疑があるので、事情聴取させてほしい』と家内に告げたと言います。家内は驚いたものの【ひき逃げ】と聞いて、とっさには昨日の一件とは思いもせず、何かの間違いだと即座に否定したのですが、警察官から『昨日の自転車の男性が、あの後すぐに近くの交番に飛び込み、ひき逃げされたと訴え出た』ということを知らされ、家内は一瞬にして全身が凍りつき、言葉を失ってしまったのです。」