翌週の月曜日から金曜日まで毎日朝1時間ほど、奥さんが子供を幼稚園バスに乗せた後の行動を確かめるよう、依頼者様にお願いしたところ、その結果はすぐに現れました。
「月曜日は子供を見送った後、そのまま自転車で西方面へ走り去って行きました。そして先週と同じ火曜日、妻は前回と同じように子供を幼稚園バスに乗せた後、スーパーに自転車を置いて、近くに停まっていたグレーのワンボックス車に乗り込みました。
今度は前回と違い、冷静に確認できました。運転していたのは四十半ばの男で、車のナンバーは○○○○です。」という依頼者様からのご報告がありました。
依頼をお受けし、調査は毎週火曜日ごとに実施する事になりました。
翌週から2週の火曜日は空振りに終わり、今度こそと意気込んだ3週目、ようやく男のワンボックス車がスーパーの近くに現れ、奥さんを乗せて動き出すと市内を後に北へ向かい、途中のコンビニで弁当やお茶を買い込んだ後、到着した湖畔の公園で景色を眺めながら弁当を広げました。
その後、ワンボックス車は再び北上を始め、主要道を逸れると山道へ入っていきました。
先は行き止まりと思われ、離合もままならない道幅のため、車両での追尾から徒歩による捜索に切り替えました。
歩く事20分、ワンボックス車が小さな分かれ道に頭から突っ込んで車の後部しか見えない場所にすっぽり収まっていました。
これなら誰にも気づかれない絶妙の場所でした。初めて来た場所とはとても思えません。
車の後部はカーテン状の布で覆われ、車内の様子はまったく分かりません。周囲はうっそうとした山林のため、車の前へ回りこむ事もできず、「こんな不自然な場所に車を止め、一緒の時間を過ごしていた。」という傍証の映像撮影にとどまりました。
その後1時間あまりで車は動き出し、市内の自転車を置いてあるスーパーに奥さんを送り届けました。
翌々週の火曜日に同じパターンで接触した奥さんと男は、市内から東方面へワンボックス車を走らせ、郊外の洒落た珈琲店に入りました。
その後、森林公園へ向かったワンボックス車は、またしても車の往来もなく先が行き止まりの山道へ進入していきました。前回と同じように、車は道路からは見えにくい巧妙な場所に駐められていましたが、前回の苦い経験から準備万端でしたので、防護服に身を固め、背丈以上に生い茂った草木を掻き分けながら車の見える位置を探っていきました。
30分ほど山中を進み、ようやくワンボックス車を捉える事ができました。先は行き止まりで三畳分くらいのフラットなスペースへ停車しており、車の頭上はうっそうとした樹木で覆われた状態でした。言わずもがなの様子に呆れながら撮影しました。
その後、男性の身元を調べたところ、その男は数年前に妻の実家をリフォーム工事してもらった工務店の担当者でした。
当初は夫婦仲の修復を望んでおられた依頼者様も、調査報告を目の当たりにして吹っ切れたとおっしゃりました。
その後、弁護士さんが代理人となり、訴訟を起こす事なく相手男性と慰謝料支払いで合意し、奥さんも不貞行為を認めた為、依頼者様の意向を反映した形で離婚となりました。