しかし、残念ながらそういったものは無く、彼らから有力な情報を得る事はできませんでした。
落胆した私がそのクラブを後にしようとした時、話を聞いた学生の1人が、学内のクラブ全体をまとめる体育会(学生が運営)というものがあり、当時のサッカークラブの主将がその体育会の委員になっていれば、その体育会の名簿にその主将の連絡先は載っているはずだと口にしたのです。
私はすぐに体育会の事務所を訪問し、体育会を運営する学生に歴代の名簿を見せてもらいました。
その名簿でちょうどマルタイがクラブに在籍していた平成11年当時、サッカー同好会の主将のI氏が体育会委員を務めていた事が判明しました。
私はこのI氏という人物が今現在、京都市内のとある会社に勤務している事をこの名簿から確認するとすぐに同社へと向かいました。
割に大きな会社であった為、正直アポイントメント無しで勤務中にあってもらえるのか不安でしたが、受付の女性社員に事情を話し、昼休憩前の時間帯であった事もあり、I氏に会う事ができました。
マルタイにとって一年先輩にあたるI氏はマルタイについてこう語りました。
『彼は一言で言えばきつい性格。頑固な面がある。上下関係はわきまえており、先輩に口答えするという事はないが、同級のチームメイトとはよく衝突していた。それが元でチーム内に険悪なムードが漂う事もしばしば…。但し、それは彼の誤った言葉の遣い方によるものだ。そこへもって歯に衣着せぬストレートな物言いも加わって人の勘違いを誘ってしまう。そういう理由で口論が絶えなかったが、こちらが彼の間違っている点をちゃんと理論立てて話せば最後には納得していた。クラブ活動については特に技術レベルが優れているとは言えないが、一生懸命練習に取り組んでいた。何事にも一生懸命であるが故に妥協を許さない一面が周囲の反感をかってしまう。私との議論においてもそれは同じで真っ向勝負の感じがあった。』
こうしてI氏への聞込みを終え、教授とI氏の話を聞いて漸くマルタイの人物像が見えてきました。
そして山田さんがマルタイに対して嫌悪感を抱いた理由もわかったように思います。