結果からいうと、私はこの教授から期待以上の証言を頂ける事となりました。
この教授によるとマルタイは『一言で言えばユニークな人物。よく言えば硬派、悪く言えばとっつきにくく社交性が乏しい、なかなか心を開かない人物である。
とはいえ、人との交流を遮断してしまうような事はなく、言うべき事ははっきりとストレートに述べ、私(教授)の所へ講義時以外にも何度となく顔を出していた。彼だけが律儀にも未だに年賀状を送ってきてくれる。私が研修でアメリカへ行っていた時も、どこで聞いたのか、彼は私に会いに単身アメリカまで来て一緒に食事をした。度胸があってバイタリティのある若者だと感じた。
確かに現代の日本社会、特に企業の一社員としてやっていく場合、彼のように上司に対してこびへつらう事もなく、遠慮なくストレートに物を言う点についてだけみると誰もが彼を敬遠してしまいがちだが、一つの事に納得するまで打ち込む姿勢や、その事について人の倍以上考えを巡らせるという性格は充分評価できるのではないか。』との事で、大学教授らしく、マルタイに対する比較的客観的な印象を語って頂けました。
そして最後に同教授より『そういえば、彼は大学時代にサッカークラブに入っていました。』との証言が得られた為、私はその線からもう少し聞込みを続ける事にしました。
しかし、この点についても、マルタイと当時一緒にクラブ活動を行っていた仲間をどうやって探すのか?
私は考えました。大学においては、全国レベルの大会に出場するような有名校でない限り、中学・高校のようにコーチや監督、または顧問を勤める人物は存在しません。
この大学のサッカークラブは有名ではなく、同好会程度のものでしたからやはりそういった人物はおらず、思い悩んでいたところ、新入学生を対象にしたクラブ活動への勧誘を行う在校生の姿が目に止まりました。(ちょうど4月の初旬にこの調査を行っていたのです)
春休み中であるにも関わらず、学生らがその活動の為に大学を訪れていたのです。
そして私はその一群の中にサッカー同好会を見つけ、責任者と思しき学生に尋ねてみました。
マルタイが同大学を卒業してから5年が経過しており、現在の在校生らとマルタイの間に接点はないでしょうが、もしクラブ誌というものがあればという一点に賭けたのです。