皆さんが新聞やTVなどのマスメディアで深刻ないじめ問題のニュースを目にする事も多いでしょう。
いじめを苦にした自殺が多発した事を受け、平成18年11月には文部科学大臣が「文部科学大臣からのお願い」という形で国民に対する語り掛けを行い、続いて当時首相であった安部元首相も「いじめ問題への緊急提言」を発表しました。この緊急提言では、いじめを見過ごした担任教師やいじめを行った児童に対する懲罰措置が含まれています。
このように、教育の側からのアプローチが進んでいますが、親側からのいじめ対策の一つとして探偵がいじめ解決のお手伝いをさせて頂く事があります。
「小学校三年生の息子がこの頃ふさぎこむようになった。朝も学校へ行きたがらない。息子に原因を聞いても何も言わないが、もしかして学校でいじめにあっているのでは?」
という不安を抱いてその依頼者は当社を訪れました。
そこで、当社はまず、登下校時の状況を直接追尾にて終始確認し、そこで特段変わった様子がなかった場合には、第二段階として、学校内での様子を確認する事にしました。
※このように、二段階に分けて調査を行うのは、無駄な調査を省き、調査料金を低く抑える為です。
実際に調査を開始したところ、朝、家を出た息子さんは友人宅へ友達を迎えに行き、その後も同様に人数を増やしながら学校へ登校しました。
この間、友人たちとの会話でも笑顔が見られ、何も不審な点は感じられませんでした。 そこで、一旦調査を中断し、夕方から調査を再開しました。
最後の授業が終わってから数十分が経過したところで登校時とは別の友人4名と共に息子さんが小学校から出て来ました。
どういった理由かは分かりませんが、一緒に登校していた友人とは別の子供たちです。 クラスが違うのだろうかなどと考えを巡らせながら調査員は追尾を始めました。
ところが、荷物を持たされたり、暴力を振るわれたりするような様子も見られないのに息子さんの表情がやけに暗いのです。言葉も余り発していないようです。 調査員は距離を詰めて子供たちの会話に耳を澄まし、その内容を録音することにしました。
そこで聞こえてきたのは、そんな直接的な暴言などではありませんでした。軽い皮肉程度のものです。例えば、話の最後のオチに息子さんを引き合いにだすようなものでした。
言葉は悪いかもしれませんが、大人になれば受け流してしまうような程度の発言でしょう。
でも、息子さんは明らかに傷ついていました。 その後数日登下校時の調査を行いましたが、いずれも同様の結果でした。 調査結果を依頼者に報告したところ、あからさまないわゆる「いじめ」というものが無かった事に安堵されると共に、わが子の繊細さに改めて気付かされたととても驚かれていました。
常日頃から接していても、気付かない点は多々あります。 子供とはいえ、親に対しても高いプライドを抱いていたり、こんな事を言えば見捨てられるのではという不安感から言い出せない事があったり、些細な事でも深く傷つく感受性の豊かさがあります。
依頼者様が、その後息子さんとよくよく話し合ったところ、やはり、下校時との友人のやりとりで傷ついていたこと。
プライドが邪魔をして、親にもいえなかったこと。
友人にも嫌だという気持ちをはっきりと伝えられない事。など、息子さんの感情を理解する事ができたそうです。
この結果に対して様々な対策方法があるとは思いますが、この依頼者が選んだのは、息子さんと対話することでした。具体的には、相手の親や学校へ伝えるのではなく、息子さん自身で問題を解決すべく、嫌なことは嫌だと相手にはっきり伝えられるように息子さんが変わるという道を選ばれました。
その後、依頼者からは息子が長期休み期間には友人と頻繁に遊び、更に休みが終わって学校が始まるのを楽しみにするようになったという連絡を頂きました。 本来第三者が介入すべきではない、親ができることではないかという意見もあるかと思います。
ただ、高いプライドが邪魔をして、きっかけがないと感情を表に出せないお子さんも多くいます。今回もそんなお子さんの一人でした。
私たちはそのきっかけ作りのお手伝いをさせていただいたのです。 今回は、いじめ問題というよりは気持ちの行き違いによる微妙な問題でしたが、次回では深刻ないじめ被害に対して私どもの取得した被害の証拠をもって学校側と協力の上でいじめ問題を解決に導いた事案をご紹介したいと思います。