離婚裁判の管轄地

今回は不倫騒動から離婚に発展してしまい、裁判で争うことになったケースをご紹介しましょう。

私たちが依頼された調査で不貞事実が明らかになったとき、夫婦がやり直そうという方向でなく、亀裂が埋められずに離婚という方向に進むこともあります。その際には、まず夫婦間での話し合いによる協議離婚を目指すことになります。
しかし、話し合いで決着せず、裁判で争うことになった場合だと、双方の感情がもつれてしまっているので、その時点では、ほとんどの夫婦が別居状態になっています。離婚裁判まで進むとお互いに顔を見るのも嫌になり、多くは事の発端となる問題を起こした方が家を飛び出し、結果別居生活になるケースが目立ちます。
こういったケースでの管轄地、すなわちどこの裁判所で争うかは、時間や交通費、弁護士へ支払う日当などから経費的に非常に重要な要素となります。

実際の事例で説明しますと、「広島に住む依頼者のAさんは、夫B氏と平穏な結婚生活を送っていましたが、ある日B氏がC子と不倫関係にあることを知りました。Aさんは当社にB氏の行動調査を依頼され、B氏とC子が不倫関係にある証拠を取得すると、C子に対して慰謝料請求をしました。なお、B氏の不倫発覚後、AさんはB氏と住んでいた賃貸住宅を出て、実家のある大阪市で暮らすようになり、その直後にB氏も転勤で福岡市へ住み始めました。またC子はB氏と別れて松江市へと引っ越しました。」
さて、AさんがC子に対して起こした訴訟行為ですが、この審判はどこの裁判所で行なわれることになるのでしょうか?

裁判で争う場合、原則として被告の住所地にある管轄裁判所で審判されるのが原則です。
しかし、不倫行為に起因する訴訟については、不倫行為は不法行為とみなされるため、不法行為地での審判も可能となります。
今回の場合、現在Aさんは実家のある大阪市で生活していますが、大阪は被告人の住所地でも不法行為の場所でもないため、大阪の裁判所で争うことはできません。被告C子の住所地である松江市か、不法行為地である広島での裁判のいずれかになりますが、この場合は交通の利便性からAさんが広島での裁判を選択したとしても、被告側からの異議で、松江の裁判所で争うことになる可能性が高くなります。

広島で裁判を行なった場合、原告・被告の双方が現住居地から裁判所へと出向くことになり、また、Aさんが大阪から松江へ行く場合と、大阪から広島へ行く場合とでの費用負担が同程度と判断されるためです。今回のケースではそれぞれの住居地から総合的に判断すると、松江市の裁判所で争う可能性が高く、原告のAさんにとっては費用負担が重い分、辛い訴訟行為となるでしょう。
なおこの場合、弁護士の選任は松江市で開業されている弁護士事務所を直接訪ねて依頼したほうがいいと思われます。その理由は、Aさんの地元である大阪の弁護士に依頼すると、松江市で行なわれる審判に出席する度に一日出張扱いとなるため、追加経費(一日の日当は地域と弁護士により異なりますが、平均5万円程度、それに加えて旅費)が高額になってしまい、慰謝料請求の実質金額(通常100~300万円)に対する経費割合が高くなり、結果的にAさんの受け取る金額が減ってしまうからです。

結論から言えば、早い段階で訴訟行為を考慮していたならば、Aさんは今までどおり広島に住み続け、過ちを犯したB氏に転居してもらう方向で進めるのが最善です。そうなれば、広島の裁判所で審判が行なわれることになり、弁護士も広島で選任できることから相談もしやすく、追加経費がふくらむこともありません。