認知症と統合失調症(前編)

以前の依頼者様から次のようなお電話をいただきました。

「近所のAさん(老婦人)に困っているんです…
その方は1人暮らしなんですが認知症が進み、家からものすごい悪臭が漂って、ゴミを出すようにやんわりお願いしても聞き入れてもらえず、近頃は近所中で悪臭が鼻をついて窓を開けられない状態で。
市の苦情相談や保健所に相談しても一向に解決しない状況が続いています。この間は夜中にパトカーが何台も来たので驚いて外に出てみると、Aさんが警察に110番通報したためだと分かりました。
近所のマンションで助けを求める女性の叫び声がしているという通報だったようですが、もちろんそんな事実はなく、警察ではAさんの空耳ということでその時は決着したようです。ところがその後もAさんは同じようなことで110番通報し、そのたびにパトカーが出動して問題になっています。
もちろんAさんに悪意があるわけではなく、Aさんの認知症の悪化がもたらしていることだと理解していますが、地区の民生委員さんをはじめ行政では何ともできないということが分かってきました。そんな時、以前お世話になった御社を思い出し、ホームページを拝見すると、『統合失調症』という問題にも手を差し伸べておられるようなので、Aさんの問題にも何か方法をご存じないかと思い、お電話させていただきました」

今回のAさんの症状は認知症であり、私達がお手伝いさせていただいている「統合失調症」とはケースが違うので戸惑いましたが、助けを求める女性の叫び声が聞こえるという点では「統合失調症」と類似しているのかなとも思い、ご相談に乗らせていただくことにしました。

後日、依頼者様と共にAさんの自宅をうかがったところ、Aさんの自宅がある通りに入ったとたん、何とも言えない臭気が漂い始めました。そしていざAさん宅に入ると、チラッと見ただけでも家中に生ゴミや食べ物のかすが散乱しており、鼻を突き刺すような強烈な臭いに襲われ、とても家の中で話ができる状態ではありませんでした。
認知症の方の中には、臭いを感じとれない症状の方がいると聞いていたので、まさしくこの状況がそうなんだと理解しました。いったん屋外へ出た後、気を取り直して再びAさん宅に入ると、Aさんは「どちらさん?」とつい5分ほど前に挨拶したことをまるで忘れ去られており、今初めて出会ったような応対をされました。このときAさんの「認知症」の症状を目の当たりにすることとなりました。

その後は、行政の窓口や病院など関係機関を回って様々な方々のお話をうかがいました。
認知症は日本が少子高齢化社会であり、子どもが少なく老齢世代が多くなるという逆ピラミッドの人口構成となる将来、社会問題として大きく取り上げられなくてはならない問題です。
また、「統合失調症」も現代社会にあって社会全体で取り組まなければならな
い問題といえます。

ところが、認知症や統合失調症には、それに向かい合う姿勢に大きな壁が立ちはだかっていました。「個人の権利」という、どうにも難しい権利の壁でした。